これはなにか
振り返ると2019年は、組織やその地固をした1年だったと言える。
ハード部分としては、データを適切に扱うためのELTパイプライン、データマートの整備、分析環境の構築など、中長期で事業推進を行うに足る、地固を行った。
一方で、ソフト部分としては、組織に時間を投資した1年だった。
その中で、組織の急拡大とその弊害について考える機会が多かった。
今回のポストでは、その点について記述する。
なぜ組織は急拡大を目指してしまうのか
理由はいくつかある。パッと思いつくだけでも
- 短期で売却によるExitを目指しているので、中長期での組織への影響よりも短期での成長・バリエーションに、創業者の興味関心が強い
- 急拡大するマーケットでシェアを一気に広げないと負けてしまうドメインで戦っている場合
- ex.伸びが顕著でプレイヤーがどんどん出てきている市場、勝者がまだ決まっていない新興市場かつWinner Takes All型でデファクトスタンダードを取らないと負けてしまう市場 etc..
- 「ファンドの償還期間」というビジネスモデルの末端に組み込まれた結果、一定の期間でのExitに対してプレッシャーがかかる
といったものが上げられる。
これらの条件のどれかに合致する場合は、程度の差はあれども組織の急拡大を目指していく方向になるのではないかと思う。
組織の急拡大による弊害
LinkedInの創業者、リード・ホフマンは「起業とは崖から飛び降りながら、飛行機をつくるようなものだ」と言っている。
事業の判断や起業するかしないか、といった点では確かにそのとおりだが、こと組織づくりや採用に関しては、崖から飛び降りながら行ってはいけないと感じている。
飛行機を作るのは、組織やその構成員であるヒトだ。組織やヒトが盤石であれば、崖から飛び降りながらでも飛行機は作れる。
しかし、組織やヒトがしっかりしていない状況で、飛び降りながら組織も飛行機も作る、というのは相当難易度の高い曲芸である。
実際、組織の急拡大による弊害というものがある。
質的な急拡大による弊害
質的な急拡大とは、CxOのようなエラい人が急にパラシュート人事で降りてくるパターンだ。
しかもその人は現場メンバーは会ったこともなければ、知らされてもおらず、当日急に登場し、CxO然とし始める。
適正・能力・組織文化へのFIT感があればよいが、ないと最悪だ。
現場と執行レイヤーの長であるCxOとの間の信頼は作れず、連携は取れず、そのCxOは孤立し、結果機能しなくなる。
さらにそのCxOが政治屋だと地獄である。
メンバーとは連携が取れていないが、自分を採用した経営陣に対しては良いレポートしか上げず、結果正しい情報が経営に行き届かなくなり判断ができなくなる。
量的な急拡大による弊害
量的な拡大とは、実行の手が必要で、目標採用数の達成が絶対とされた採用活動を行い、ヘッドカウントを増やすパターンだ。
この場合、採用のハードルが下がることが考えられる。
採用基準の低下と言っても、いくつか種類があるし、ときには意図的に下げるということが有効な場合もある。
その中でも特にカルチャーFIT面での妥協が一番組織を壊す。
これまで築いてきた組織文化の基盤が崩れるからだ。
組織文化への投資を優先する
質的な急拡大・量的な急拡大どっちにおいても、組織カルチャーへのFITが大切だと考えた。
その観点からドクターズプライムでは、採用面に関して短期利益の追求よりも、中長期的に続く組織の強さを作ることを優先した。
粘り強くそこに投資することが出来たのは3つの理由がある。
- ペインが強く、顧客の財務基盤が盤石な業界であった
- 先にユーザーを集めてあとからマネタイズする投資専攻型モデルではなく、受益者負担型モデルで、投資をした翌月から収益を上げることができるビジネスモデルであった
- 「作らないものづくり」によって、外部株主を招かずに、初期の仮説検証を行うことができた
これはなにか 2019年も、あと残すところ2日という所まで来ました。 個人的には、2019年1月末を最終出社としてメルカリを退職し、中高の同級生である田(でん)と創業した株式会社ドクターズプライムへのフルコミットを開始した、転換点となる年[…]
これらは突き詰めると、
- きちんと顧客の課題を解決して、毎日収益を上げること
- ステークホルダー全員が短期的な事業成長よりも、盤石な組織を作りに投資する方針に賛成していること。
この2点に尽きる。
やってきたこととやらなかったこと
中長期的に続く組織の強さを作るために、2019年にやってきたこととやらなかったことがある。
- やってきたこと
- 人事評価・等級制度の策定
- カルチャーコードの作成
- バリューの作成・再定義
- インターンからの正社員登用
- インターン&副業中心の組織体制の継続
- やらなかったこと
- バリューが固まる前の中途採用
- CxOの採用
- マネージャーの採用
- 外部資本の組み込み・エクイティでの資金調達
1人目の社員を採用したときから人事評価・等級の制度を整えた。
面倒だから、事業優先だから、まだ必要ないから、色んな理由で数十名まで作らない会社も多いと思う。
一方、人事評価は会社からのメッセージなので、組織としてなにが正しいか、会社として何を評価するのかを明確にして指針を立てることを我々は重要視した。
また、バリューが決まりきるまで、一定期間一緒に働いていない人の採用を行わないことにした。
その時点で、華々しいトラックレコードを持つスーパープレーヤーの採用をすぐには行わないことが決まった。
そして、インターン&副業中心の組織体制の継続および、インターンからの正社員登用を推進していく方針を決めた。
短期的な成長 < 中長期的な組織の強さ
こうして、短期的な成長を求めるがゆえに組織の破壊を導く恐れのある採用を行わないことを決めていった。
自分たちはたまたま運良く、ペインが強くて顧客の財務基盤が盤石なドメインで、受益者負担型のビジネスモデルで事業を展開し、「作らないものづくり」によって、中長期的な組織の強さに投資する意思決定をすることが出来たと思っている。
組織への時間的投資を行った2019年を通じて、組織拡大をしても壊れないための準備が出来てきた。
2020年からは本格的に組織拡大をして、人員的にも事業にドライブをかけていきたいと考えている。
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