職種と業務型で分類するマネジメントの4類型

これはなにか

自分が生み出す成果を最大化させるためにはどうしたら良いか?

トッププレイヤーとしてスター選手たり続けるのか?それともマネジメントとしてチームのアウトプットを引き上げる側に回るのか?

本ポストでは、このよくある永遠の問いに対して職種(クラス)と業務型(タイプ)による分類という切り口を用いて回答を導き出すことを試みる。

クリエイティブクラスと組織化クラス

職種というものは、ひとりあたりのパフォーマンスのボラティリティの大小によって、大きく2つのクラスに分けることができる。

比較的ボラティリティの大きい職種を「クリエイティブクラス」、比較的ボラティリティが小さく、ひとりあたりのパフォーマンスが安定している職種を「組織化クラス」と呼ぶことにする。

勝ち方のアプローチが違う

これら2つの職種クラスは特性が全く異なっており、単位時間あたりの成果を最大化させようと思ったときに、取るべき正しいアプローチが異なる。

異なるどころか正反対のアプローチとなるため、この違いを理解していないとお互いがお互いのお作法・常識を押し付けて成果の最大化を要求することになり、誰も幸せにならない。

クリエイティブクラスのアプローチ

クリエイティブクラスは、一人ひとりの成果のボラティリティが高い。

能力の高い人は1人で1,000の価値を生むが、低い人は0の価値、それどころか場合によってはマイナスを生む。トップとボトムの差は計り知れないほど開く。

クリエイティブクラスに該当する職種は、PdM、デザイナー、ソフトウェアエンジニア、BizDev、アナリストといった職種である。

ソフトウェアエンジニアはわかりやすい例で、Oracleの研究でも優秀なソフトウェアエンジニアはそうではないソフトウェアエンジニアと比べて成果に2万倍の開きがあると言われている。

こういった職種の場合、自分が生み出す成果を最大化させるためにはと考えると、より個として成長し強くなることがアプローチとして報われやすい。

そこそこの集団を束ねるリーダーになるよりも、キレキレのトッププレイヤー、エースとして第一線で活躍するほうが成果が最大化されやすい。

組織化クラスのアプローチ

一方、組織化クラスは、一人ひとりの成果の幅が比較的安定しており、ボラティリティが低くステーブルである。

強い人でも100の成果が限界だし、弱い人でも20の成果が出てしまう。トップとボトムの差は開いたとしても5倍がせいぜい限界だろう。

この組織化クラスに該当する職種は、セールス、カスタマーサクセス、カスタマーサポートといった職種である。

砂漠の中で砂でも石でも売れるようなどんなに優秀なセールスマンであったとしても、1日5アポ x 20営業日でひとりで作れる成果は100受注が限界となってしまうことを考えるとわかりやすいだろう。

これらの職種の場合、自分が生み出す成果を最大化させるためにはと考えると、集団の長になり人を束ねていくほうがアプローチとして報われやすい。

自分自身のスキルを磨いてプレイヤーとして一流になったところである程度のところでアッパーに到達してしまうのだ。エースとして一線に立ち続けるよりも、一定のボリュームの組織を動かすリーダーとして活躍するほうが成果が最大化されやすい。

クリエイティブクラスのマネジメント不要論

ここまでの整理を振り返ると、クリエイティブクラスであれば、自己の成果を最大化させるためには、マネジメントレイヤーに行かずに、スタープレーヤーとしてチームのエースであり続けることが正しいように思えてくる。

組織化クラスと違って、ひとりの人間のパフォーマンスのボラティリティが大きく、人を束ねるより自分が個人として強くなるほうが手っ取り早いからだ。

しかしそれは大抵のチームプレイにおいて間違っている。たしかに小さい仕事をするのであればそのとおりかも知れないが、どこかの組織に所属し仕事をする以上、一人ではできないなにか大きな仕事を成し遂げようとしているはずである。

自分は強い個人として1,000の圧倒的な馬力で成果を上げられるかもしれない。がしかし、大抵のケースで解こうとしている問題は5,000であったり10,000であったりする。

となると、結局最小のチームにするとしても、自分レベルの1,000の馬力を備えた人を5人、10人集める必要がある。MAXパフォーマンスの人間を5人、10人、これは非現実的である。

最終的に回り回って、クリエイティブクラスであっても、マネジメントを行うことが個人が生み出す成果の最大化につながる。

クラス別のマネジメントアプローチの違い

とはいってもやはり、職種クラスが変われば、適切なマネジメントのアプローチも異なる。

クリエイティブクラスの効果的なマネジメントアプローチ

ひとりあたりのパフォーマンスのボラティリティが大きくともすればクリエイティブクラスにおいては、無闇矢鱈に人を集めて束ねてもあまり効果的ではない。

このクリエイティブクラスのパフォーマンスを最大化するマネジメントのキーワードは「引き出す」である。

それは具体的には「育成」であり「障害物の排除」であり、そのマネジメントスタイルはサーバントリーダーシップなどと言われたりする。組織化するよりも個々の人間のパフォーマンスを引き出すというマネージメントが成果の最大化において重要になる。

組織化クラスの効果的なマネジメントアプローチ

一方、ひとりあたりのパフォーマンスのボラティリティが小さく安定的な組織化クラスのパフォーマンス最大化のキーワードは「まとめる」である。

それは具体的には「統率・統制」であり「集団を率いること」であり「規律を守らせる」ことである。ゆえに効果的なマネジメントスタイルはリードをとる、牽引型のリーダーシップとなる。

個々のパフォーマンスを引き出すよりも何人を束ねられるか、千人将になれるか、一声でどれほど大きな組織を動かせるかがパフォーマンスに対しての最大変数となる。

クリエイティブクラスであってもマネジメントが重要

人や組織のマネージに対してネガティブなイメージを持ちやすいクリエイティブクラスであっても、マネジメントは自分が生み出す成果を最大化しようとすると避けては通れない。

ただ、組織化クラスのそれとは毛色が異なるだけなのである。おそらくクリエイティブクラスの人間が担いたがらないマネジメントは組織化クラスのそれであるケースが多いように思う。

それはただ「組織化クラスに最適なマネジメントスタイルをする必要性を感じないから」であり、解像度を上げて分解して考えれば、クリエイティブクラスに最適なスタイルで行うマネジメントの重要性の理解および、苦手意識は和らぐかも知れない。

フロー型業務とストック型業務

これまでの職種クラスの分類に加えて、さらに業務タイプが存在する。フロー型とストック型の二分類である。

業務タイプは、ひとつの業務や施策・アクションが次回の業務や他者の業務に対してどれだけ影響を与え、干渉するかによって区分される。

一単位の業務行動が他の業務行動に与える影響が弱いものを「フロー型業務」、逆に強い影響を与えるものを「ストック型業務」とする。

ここまでの職種クラスと業務タイプの区分、そしてそれぞれをマトリクスとして各職種をプロットすると、下記の図ような整理になる。

以下に、各象限の特徴、具体的な職種、その職種におけるマネジメントのポイントをまとめる。

クリエイティブクラス x フロー型

この象限の職種は、ひとりひとりのパフォーマンスにばらつきが出やすいが、互いに干渉は弱く負債が積み上がりにくい領域である。

例えば、プロダクトマネジャー、デザイナー、アナリスト、コピーライター、イラストレーターなどが上げられる。

これらの職種では、能力の高い人は突出したアウトプットを出す一方で、能力の低い人は価値のあるアウトプットを殆ど出せないことも珍しくない。

また、勝負はたいてい一回きりであり、ある施策が失敗したからといって、その施策が未来に禍根を残すということは殆どない。それゆえ「まずやってみよう」が許されることが多い。

この職種のポイントは学習機会を増やし、育成の仕組みを整えつつも、とにかく打席に立ち、フィードバックサイクルを回しながら1本のヒットを生み出すことである。

クリエイティブクラス x ストック型

この象限の職種は、ひとりひとりのパフォーマンスにばらつきが出やすいうえに、一つの成功や失敗があとに続く業務に影響を及ぼす。

例えば、ソフトウェアエンジニア、ファイナンス担当者、BizDevなどが上げられる。

これらの職種では、能力の低い人は成果を産まないどころか、将来の価値を毀損し、腐敗の種を残す可能性すらあるため、量や頭数よりもとにかく質を高い水準に保つことが重要である。

よって、採用の基準を下げずに、本当に有能な少数でチームを構成し、適切なオンボーディング・育成の仕組みに注力することが重要になってくる。

組織化クラス x フロー型

この象限の職種は、ひとりひとりのパフォーマンスのばらつきが比較的小さく、ひとつの業務が別の業務に与える影響は少ない。

例えば、インサイドセールス、フロントセールス、カスタマーサクセスマネジャーなどが上げられる。

これらの職種では、ひとつの失敗が先の業務や他者の取り組みに悪影響を及ぼしにくく、それぞれの業務が独立している。

そのため、この職種において自分の出す成果を最大化しようとした場合、より大きな組織をまとめ、方針を示し動かせるようなリーダーシップが重要になる。
また、個々人の成果を引き上げるためには、より打席に立ち、まずは行動目標を達成できるような行動管理、マネジメントが重要になるだろう。

組織化クラス x ストック型

この象限では、ひとりひとりの成果ボラティリティが小さいが、ひとつの業務が他の業務に影響を与えやすい職種が含まれる。

例えば、カスタマーサポートのように複数人でひとりの顧客に対応する職種が当てはまる。

これらの職種では、マニュアル化や業務水準の平準化の仕組みの導入を進め、ダウンサイドリスクを回避しながら組織化していくことが重要になる。

まとめ

ここまで見てきたように、4つのパターンごとに有効なマネジメントアプローチは異なってくる。

本ポストを3行でまとめると下記のようにまとめられる。

  • 成果のボラティリティの大小によって2つの職種クラスが、業務の干渉度の大小によって2つの業務タイプが定義され、2×2で4つのパターンがある
  • 成果のボラティリティが大きいクリエイティブクラスほど、マネジメントを嫌厭し忌避する傾向があるが、最終的にはマネジメントが重要
  • 職種クラス x 業務タイプの4パターンごとにそれぞれ有効なマネジメントのアプローチが異なるので適切なアプローチを適応することが重要

低解像度の状態で「マネジメント」とひとくくりにするから、アレルギーが起こるし、成果につながらないマネジメントを行うことになる。

各自の職種がどのパターンに当てはまるかを踏まえた上で、自身の成果を最大化させるための、よりよいマネジメントに取り組むきっかけになるとよい。

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