“組織のスループット”を仕組みで最大化するTalent Ops構想

_組織のスループット_を最大化するTalent Ops

これはなにか

組織をひとつのプロダクトに見立てて、”組織のスループット”を上げて生産性を上げることを目指したTalent Opsという考え方をまとめたポストである。

先日の以下のツイートに思わぬ反響があったことを受けて、考えていることを整理した。

元のツイートにもあるように、いわゆるDev OpsでいうところのOperationsという概念で、人事プロセス全てを最適化して組織全体のパフォーマンスを最大化することを目指したいと考えている。

効率化・最適化について思うこと

人事業務に限らないが、ヒトがするべきことだけに集中できる環境を目指したい。
いわゆる定型的なこなすだけの作業は、極論ヒトがやらなくていいことでありシステムに任せたほうが良い。
むしろそのほうが外部品質(作業の正確性、確実性、低遅延・低遅滞、スケーリング性)が安定する。

私含めてヒトはミスをする生き物だし疲れるので、左の皿にある豆を右の皿に移し続けるような単純作業に向いていない。

ヒトが本当にやるべきこと

本当にヒトがやるべき仕事は以下の3種類に絞られる。

  • 事実の評価と判断
  • 創造性を求められる仕事
  • ハイコンテキストな仕事

厳密に言えば一部システムでもできることはあるし、最近はシステムが絵や小説を書く時代なので極論できないことではないが、これらはまだまだ比較すると人間のほうが遥かに向いている。

よって基本的には上記の3種類以外の業務からヒトを開放したいという気持ちがある。

特に、定形作業、ミスが許されない作業、モニタリング、アラート、レポート、管理といった業務はだいたいシステムに任せたほうが全体最適である。

システムが得意なこと

ヒトとシステムで比べてシステムが得意なことは次の4つである。

  • スケール(システムは疲れない)
  • 自動化(システムはミスしない)
  • 網羅性(システムは抜け漏れない)
  • 定量的な情報処理(システムは計算が得意)

これも厳密に言えば、予期せぬエラーは出るし、システムも疲れるし、遅延・遅滞も発生はするが、ヒトと比べるとはるかに安定する。

システムの導入によって得られる2種の効用

システムをプロセスに取り入れることで得られる効用は大きく分けて以下の2つである。

  1. 作業の効率化(コストの最小化)
  2. 隠れた機会の発見(効果の最大化)

「作業の効率化(コストの最小化)」は作業プロセスの自動化などが該当する。繰り返しの作業やアクティビティデータの収集・蓄積などは自動化することで、コストを最小限にできる。

一方「隠れた機会の発見(効果の最大化)」はサーベイシステムによる課題の可視化や、分析とPDCAサイクル(コア・コンピタンス分析、採用活動へのフィードバック)などによって導かれる。

採用活動からオンボーディング、活躍、退職、再雇用までの一連の円環をシステムの導入によって滞りなくなめらかに回していく、そんな仕組みを作りたいと思っている。

Talent Opsとはなにか

ここからはようやく本題のTalent Opsとはなにかについて記述する。

Talent Opsは「組織をひとつのプロダクトに見立てて、”組織のスループット”をシステムや仕組みで向上し、組織の生産性を上げる取り組み」である。

以下にその全体像を記した図を掲載した。

_組織のスループット_を最大化するTalent Ops

Talent Ops構想の全貌

“Talent Ops” でGoogle検索すると、海外の求人がいくつかヒットするものの、おそらく特定の定義がされているわけではないだろうし、ましてや日本において考えるならば、ほぼ造語と言っていいだろう。

伝統的なHRやEmployeeといった単語ではなく、 “Talent” を選んでいるのは、この図に表されているように、社内だけではなくリクルーティングの前段階、採用候補になりうる方々との接点の部分まで対象領域を拡張して考えているからである。

込めるニュアンス・意味あいの問題であり、本質的には変わらないので、適宜HR Opsと読み替えても問題はない。

Dev Opsとの違い

Talent Opsは「組織をひとつのプロダクトに見立てて、”組織のスループット”を上げて生産性を上げる」営みと定義するが、”Dev Ops” という概念を考えるときのOpsに意味合いが近い。

以下にDev Opsと比較したTalent Opsの特徴を記載した。

Dev Ops Talent Ops
対象 プロダクト開発(プロセス・チーム) 組織(運営プロセス・チーム)
目的 開発のスループット向上、開発と運用の統合 組織のスループット向上、採用と活躍の統合
打手 生産性計測と可視化、自動化、プロセス改善 サーベイ・分析と可視化、自動化、プロセス改善

このように、Dev Opsがアプリケーションやサービスをより高速に配信できるように整えられた方針・プラクティス・ツールが組み合わさった一連のモデル・概念であるのと同じように、Talent Opsも事業戦略に合わせてよりなめらかに、組織のスループットを最大化できるように整えるモデル・概念である。

Dev Opsが開発のスループットを保ち向上し続ける中で、必要な一要素としてDeveloper Experienceの向上が存在するのと同じように、Talent Opsでも事業のスループットを保ち向上し続ける中で、必要な要素としてEmployee Experienceの向上が位置づけられるという意味でも類似している。

プロダクトマネジメントとの共通点

プロダクトマネジメントと比較してみると、プロダクトを組織に例えたときに共通点の多さが伺える。

プロダクトマネジメントはユーザーを対象にその非効率の解消(もっと簡単にできる)や新しい価値を生み(できなかったことが出来る)、その結果ユーザーへ便益をもたらす。
一方、Talent Opsは候補者や人事チームを対象にプロセスの非効率の解消(自動化・円滑化される)や新しい価値を生み(課題が見つかる、改善点が見つかる)、その結果候補者・従業員と経営に便益をもたらす。

以下のようなプロダクトマネジメントの基本的な考え方が大部分転用できる。

  • どうやって無駄をなくすか、自動化出来るものを自動化させるか
  • わざわざユーザーがやらなくていいことをやらせない
  • システムで処理することで新しい価値につなげられるチャンスポイントの発見と実装

Talent Opsがカバーするステップ

Talent Opsは従業員になる前も含めて、Employee Journeyの全てのステップを対象とする。
入社前(Recruiting)、入社後(Employee)、退社後(Alumni)の3フェーズに分けられており、前者2つに対してRecruiting OpsチームとEmployee Opsチームがそのプロセスの最適化をサポートする。

退社後のAlumniフェーズにおいてはAlumni Relationship Management(と暫定的に呼ぶ)がそのメインになり、コミュニティマネジメントの要素が強く、Opsチームによる効果が薄いので、サポート外とする。

また各ステップごとに、類似し活きてくるドメイン知識が変わる。

ステップと必要なドメイン知識
再掲・抜粋: ステップとドメイン知識

このようにプロダクトやマーケティングといった要素を多分に含み、サービス提供の全般で求められる要素が必要になる。

Talent Opsがカバーするドメイン

Talent Opsがカバーするドメインは、採用広報、採用、労務、人材配置、総務、社内IT、人材育成、組織開発、制度設計、組織活性化など多岐にわたる。いわゆる人事・労務・総務領域全般といえる。

Talent Opsがカバーするロール

フロー最適化、システム化、自動化、仕組み化、これらはマストで抑えるべきロールである。スケールする仕組みにするために、組織設計や制度設計、人事施策に明るいとなお良い。

上記のロールを担う上で、SaaSツールの導入・利用および、SaaS、社内Slack、管理シート、データベースとの間のAPI連携、規模や必要性によってはスクラッチでのシステム実装を用いてなめらかにしていくことが責務の中心になる。

Talent Opsチームのプレイヤー

Talent Opsチームでは、Talent Ops Manager(以下、TOM)とTalent Ops Engineer(以下、TOE)の2職種と人事担当者によって作られる。

TOMはよりシステマチックに落とし込みスケールする取り組み方を企画し、TOEはそれを実現していくシステムづくりを担う。

この関係性は、プロダクト開発におけるPdMとソフトウェアエンジニアの関係性に近い。

組織の規模によってはスクラッチでの実装はいらないケースもあるかも知れない。メルカリやAmazonクラスになれば評価システムや目標設定システムを自前で作ったりしているが、どこまでの投資が自社にとって適切なラインになるかの判断もTalent Opsチームには求められる。

また、組織のフェーズ・規模や各個人のケイパビリティによっては以下のようなチーム構成も考えられる。

  • 人事担当者 & TOE(TOM領域はどちらかがカバー)
  • 人事担当者 & TOM(TOE領域はTOMがカバー ※スクラッチ実装がない規模前提)

Talent Opsチームが効果を最大限に発揮するポイント

先述の図の中で、ステップ別に効果を発揮する打ち手の種類を赤・黄・青のバーでプロットしている。以下、図を再掲する。

打ち手の種類のプロット

再掲: 打ち手の種類が赤・黄・青のバーでプロットされている

Talent Opsチームはこの図の青色の部分で人事プロセスに対して貢献をする。
Marketing Automationの考え方が効果を発揮するRecruitingの前半フェーズでは自動化や仕組み化、なめらかな候補者体験がその中心になるだろう。

入社労務関連のステップでは主にデータ連携と自動化が、ProductとAnalyticsの考え方が効果を発揮する入社後のフェーズではサーベイ・分析がメインになるため、データの収集・処理・分析の仕組みがその中心になるだろう。

Talent OpsだけではないCorporate Ops

ここまでTalent Opsの考え方を述べてきたが、実際コーポレート部門をはじめて管轄してみた結果、人事領域だけでなく、Corporate全体のOpsの最適化(コストの最小化・効果の最大化)をやっていきたいと思っている。

規模によるが、スタートアップの場合は自前で評価システムなどを作り込むなどをするのはコスト対効果が高くないため、特に初期フェーズではTalent Opsのみに閉じた活動ではやることが少なすぎるケースもある。

よってTalent Opsに閉じずにCorporate Opsという観点で、財務・経理の領域やリーガル、PRの領域まで染み出してコーポレート全体をなめらかにするところまでスコープを広げて活動していくところからはじめると始めやすくてよいのかも知れない。

ドクターズプライムでの現状

ここまでTalent OpsからCorporate Opsという形で話の風呂敷を広げ続けてきたわけですが、これはこうやっていきたいという構想でしかなくて、ドクターズプライム社で実現できているものではありません。(むしろ全然なめらかじゃない)

なにより、バックオフィス、コーポレート領域に正社員がまだおらず(!)、業務委託の方々の助けを借りて運営できている状況です。日々こうなめらかになっていったら良いのに…という思いは募りますが、実際にチームが作れていないという状況です。

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またバックオフィス担当者はもちろん、上記のようなHR領域やバックオフィス領域でのOpsの最適化に興味のあるPdMやエンジニアの皆様も募集しております!

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