フォーカスを明確にするPMF仮説のマッピング

これはなにか

PMF仮説の検証を進める上で、各仮説の状態を見える化する方法を記したものである。

先日、この記事を読んで、自分の事業はどうだろうと考え、実際に当てはめて作ってみたところ、次の一手を決める指針になったので筆を執った。

なお、この記事は新規サービスの運営者や、それを検討している方に見てもらうことを想定して書いている。

そもそもPMFとはなにか

PMF(プロダクト・マーケット・フィット)は様々な記事で語り尽くされているので、この記事ではその説明に多くを割かない。

他のよりわかりやすい記事を引用して説明に替える。

スタートアップにおいて最も重要なPMFの図り方と達成方法

PMFの定義として頻繁に挙げられるのが、「顧客を満足させる最適なプロダクトを最適な市場に提供している状態」です。

真のプロダクトマーケットフィット(翻訳)

顧客は、あなたがプロダクトを作るのと同じぐらいのスピードでプロダクトを購入する – あるいは、あなたが多くのサーバーを追加するより早くユーザーが増加する。ユーザーからの収益があなたの会社の当座預金口座に積み重なっていく。あなたはできるだけ早くセールスとカスタマーサポートのスタッフを雇おうとしている。

PMF(プロダクトマーケットフィット)とは?事例から学ぶ、PMF達成の測り方とその方法

人々が欲しがるものを作ること (ポールグレアム)
市場を満足させるプロダクトで、正しい市場にいること (マークアンドリーセン)
スタートアップのプロダクトに共感する、広範囲の顧客を見つけた状態 (エリックリース)

PMF仮説とはなにか

PMF仮説とは「『これらの仮説が正しければ、PMFが実現する』と事業者が考える仮説群」のことだと私は理解している。

ざっと調べた限りでは明確な定義は見つけられなかったので、上記の理解は私の解釈である。

上記の理解に基づき、PMF仮説はどういった型で表現されるかというと、下記のような形式で表せると考えている

「◯◯であれば(すれば)、△△はxxするはずだ」

より形式化すると以下のようになる。

[条件]を満たす場合、[ステークホルダー]は[期待する行動]をするはずだ」

こういった仮説が、ステークホルダーおよび、それらに期待する行動の数だけ存在すると考える。

これらの仮説群のことをPMF仮説だと、私は解釈した。

なぜこれが大切なのか

なぜ仮説をマッピングするかというと、仮説群を列挙しただけでは、どの順番でどこから着手すべきなのかが明確でないからだ。

実際に、この手順でマッピングを行ったところ、複数あるPMF仮説の状況の可視化とプライオリティが明確になった。

以降、実際にマッピングの方法を記述する。

PMF仮説をマッピングする

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PMF仮説マッピングの例。仮の事業をマッピングしてみる

チャートの2軸

縦軸に重要度、横軸に進捗度を取り、PMF課題をマッピングする。

  • 縦軸: 上にいくほど重要度が高く、下にいくほど重要度が低い
  • 横軸: 右にいくほど検証の進捗が良く、左にいくほど進捗が悪い

ポスト・イットにPMF仮説を記載

各ポスト・イットには、先程の「◯◯であれば(すれば)、△△はxxするはずだ」の形式で、PMF仮説を記載する。

ポスト・イットには下記の3つの要素を含める

  • PMF仮説: 「◯◯であれば(すれば)、△△はxxするはずだ」の形式でポスト・イット1枚につきPMF仮説を1つ記載
  • KPI: PMF仮説の検証を表現するKPIと目標値を定義する
  • ステークホルダー: ステークホルダー別にポストイットのカラーを分ける

どうマッピングするのか

以下の手順でマッピングを行う。

  1. 2軸を用意したチャートを作る

  2. PMF仮説をポスト・イットに書き出す

  3. 重要度・進捗度に応じてマッピングする

複数名でこの作業をする場合、2までを各自で行ったあとで共有し、PMF仮説を絞り込むのが良いだろう。
またその場合、以下のステップを挟むことで、ポジションや声の大きさに引っ張られずに、重要度と進捗度の認識を揃えることができる。

2-1. 絞り込んだPMF仮説ごとに、重要度・進捗度について10段階評価で、同時に数字を言い合う

2-2. なぜその数値にしたのかを議論

2-3. 合意が取れた重要度・進捗度をポスト・イットにメモ

重要度と進捗度の精度について

マッピングを進めていくと、重要度と進捗度の精度の良し悪しに頭を悩ませるかもしれない。

しかし、ここでの目的は「どの順番でどこから着手すべきなのか」つまり優先度の決定であるため、厳密な精度は不要である。

また、ANDREESSEN HOROWITZの12 Things about Product-Market Fitの#8でも書かれている通り、PMFはそんなに明白なものでなければ、一度実現すれば終わりではなく、市況に応じて追い求め続けなければならないものである。

よって厳密な精度で測ること自体はそこまで重要ではない。

もちろん、雑でいいと言っているわけではなく、こだわりすぎて足を止めても仕方がないという話である。

どう使うのか(各象限の意味合い)

マッピングした結果、下図のようなチャートが出来上がるはずである。

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実際に自社でやってみた図。各仮説は非公開

第二象限(左上)の、重要度が高く、進捗の悪いPMF仮説を真っ先に取り組んで行けば良い。

実際にいま取り組んでいるテーマが第三象限以外の場合は、そのテーマは重要じゃない可能性がある。

第三象限以外のPMF仮説は言うなれば下記のような仮説群と言い換えられる。

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マッピングの各象限の意味合い
  • 重要度が高く、進捗も良い、第一象限(右上): もう十分な仮説
  • 重要度が低く、進捗の悪い、第三象限(左下): あとでよい仮説
  • 重要度が低く、進捗が良い、第四象限(右下): やらなくていい仮説

これらの象限の意味合いを踏まえて、この章の冒頭のPMFマッピングの例を見てみると、PMF仮説1, 2がもっとも注力すべきものとわかる。

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再掲: 章の冒頭のPMFマッピングの例

また、青色のポスト・イットのステークホルダーと黄色のポスト・イットのステークホルダーの、PMF仮説の重要度と進捗度を比べてみると、黄色のステークホルダーのほうが全体的に重要度が低いが、検証の進捗が良い状態であることがわかる。

この場合であれば、黄色のステークホルダーに割くリソースを、青色のステークホルダーにドラスティックに寄せても良いかもしれない。

このように、マッピングを使うことで、注力すべきポイントがわかり、体重の乗せ方を考える参考にすることができる。

まとめ

  • PMFを目指す中で、サービスはいくつかのPMF仮説を検証していく
  • PMF仮説は複数ある場合が多いと思うが、ただ羅列するだけは少ないリソースをどこに集中すべきかを見失いやすい
  • PMF仮説を、シンプルな重要度と進捗度の2軸でマッピングすることによって、それらの状況の可視化とプライオリティ付けに役立つ
  • 重要度が高いが進捗の悪い、最重要PMF仮説に注力すると良い