共有でも議論でもない、合意形成の質を高める第三のアプローチ

ashto

これはなにか

この記事は、ミーティングにおけるアプローチで、主流である「共有」と「議論」以外のアプローチ方法についてまとめたものである。

リモートワーク・テレワークが当社でも推奨されるようになってから、ミーティングの質を高める必要性が増した。

それを踏まえて当社でも、下記のツイートのようにミーティングの事前準備をより一層しっかりと行っていこうという方針を打ち出した。

※実際のドキュメントはこちらから | MTGもっとうまくなろう憲章

その中でミーティングの事前準備をすればするほど、発生する一つの問題があることに気づいた。
その問題の解決を考える、思考過程をまとめたものがこのポストである。

ミーティングの目的と2つのアプローチ方法

ミーティングの目的は合意形成である。

目的たる合意形成に至るまでのアプローチは大きく分けて2パターンある。
1つめは「共有」、2つめは「議論」である。

「共有」というアプローチ

「共有」は文字通り情報を共有することである。決定事項や伝達する中身情報については既に確定・決定されていることが多い。

「共有」のアプローチを取る場合、合意形成自体は迅速に行われるが、一方的な印象を受け自分ごと化しにくいケースがある。

「議論」というアプローチ

一方、2つめの「議論」は特定の論点を中心に議論を展開し、その結果合意形成を得るという進め方である。

「議論」のアプローチで進めていく場合、利点と欠点がある。

利点としては複数人が参加して議論を行うことで1人では到達しえない良質なアウトプットが生まれるケースがある。その一方で、欠点として参加者が増えれば増えるほど合意形成が難しくなるという点が挙げられる。

複数人が参加することにより、議論が発散し続けて収束しにくくなっていくからである。

アプローチ別の特徴のまとめ

これらの2つのパターンをまとめると下記のようにまとめられる。

項目 1. 共有型アプローチ 2. 議論型アプローチ
主眼 決定事項に関する大多数への伝達、理解促進 より質の高いアウトプットの導出
利点 * スピードが早い
* 决めが必要なケースや見ている立場・視点・ポジション・視座の高さ、視野の広さ、見通している時間軸の長さによって議論が割れる事柄に適している
* 1対nの伝達に向いている
多様な視点、アイデアによってより良い合意形成ができる場合がある
欠点 * 自分ごと化しにくい
* 参加者はトップダウンという印象を受けやすい
* 時間がかかる
* 大人数での合意形成に向かない

共有でも議論でもない第三のやり方

ミーティングの事前準備を入念にすればするほど、結論はほぼ決まっており、議論する余地があまりないというケースが増えてきた。効率のよい会議・共有ができそうである反面、トップダウンでの実行という印象が拭えない。

しかし、考え尽くした結果、議論をするほど論点に余地はなく、議論の時間をかけてもアウトプット・決定事項の質は高まりそうにない。

こういったジレンマに対するよりよいアプローチが、共有でも議論でもない「巻き込み」というアプローチである。

この「巻き込み」は、参加者を意思決定のプロセスに積極的に巻き込んでいくことを主眼としたアプローチである。

巻き込みとは着地点や落とし所を携えた議論

具体的に「巻き込み」とはどういったアプローチか。

主催者が最終的に高度に練られた結論を持ちつつも、あえてそれを初めから共有せずに、全体で対象について考え、合意を作っていくアプローチである。

結論を持ちつつも伝えないというのは一見傲慢だが、自分なりの議論の着地点や落とし所を想定しながら「議論」を進めるというのは誰でもやったことがあるはずだ。その程度および表現だけの違いであり、根本的にはそのアプローチと大きな差はない。

社外のステークホルダーとの打ち合わせを想像してみると、実は同じことを意識せずにすでにやっていることが分かる。

顧客や別の部署のように、独立して自分と対等もしくは上の立場にいる相手に対して、お互いが関わる事項について、方針をまとめて勝手に決定して共有することは無い。
どれほど方針に自信があっても、お互いの落とし所を胸に秘めて、一度打ち合わせを行い、合意形成を図るケースがほとんどだろう。

社内やチームメンバー間でのコミュニケーションでも同じことをやるのが、この「巻き込み」というアプローチである。

この過程で、事前に自らが準備していた結論よりもさらに良い結論が導かれそうな場合は、そのまま「議論」に切り替え、より高品質なアウトプットを導くようにアプローチを変えてしまえばよい。

「巻き込み」の利点・欠点

この第三のアプローチも万能ではなく、利点と欠点がある。

「巻き込み」の利点

「巻き込み」のアプローチをとることで、議題に上げるトピックについて、参加者全員が一度考えを巡らせることになる。
考えを巡らせて、自分の主張を行って考えを外に出すことで、結果として形成された合意に対して、当事者意識が生まれやすい。

この合意を形成するプロセスに携わったことで、その意思決定を行った一員という認識を持ちやすくなるのである。

「巻き込み」の欠点

なんといっても時間がかかる。時間がかかる上に、主催者からすると大まかな着地点や結論は出ているため、とても効率の悪いプロセスのように感じられる。

决めた意思決定に対して、実行の質がそれほど重要性をもたない場合、このアプローチは時間の無駄となるかも知れない。

合意形成の3つのアプローチの比較

これまで見てきた合意形成の3つのアプローチの特徴を整理すると、次の図のようになる。

項目 1. 共有型アプローチ 2. 議論型アプローチ 3. 巻き込み型アプローチ
主眼 決定事項に関する大多数への伝達、理解促進 より質の高いアウトプットの導出 合意形成後の実行効率の最大化
利点 * スピードが早い
* 决めが必要なケースや見ている立場・視点・ポジション・視座の高さ、視野の広さ、見通している時間軸の長さによって議論が割れる事柄に適している
* 1対nの伝達に向いている
多様な視点、アイデアによってより良い合意形成ができる場合がある 合意形成後の実行時の初動スピードおよび実行の質が高まる
欠点 * 自分ごと化しにくい
* 参加者はトップダウンという印象を受けやすい
* 時間がかかる
* 大人数での合意形成に向かない
* 時間がかかる
* 一見、効率の悪い無駄なプロセスに見える

行うミーティングの性質によって、適切にアプローチを使い分けていくと良いだろう。

自らの意見が適切に扱われないとき

当社の組織運営では「あなたのチームは機能していますか?」という本を参考にしている部分が多い。

この本には、信頼に基づいた忌憚のない意見交換・衝突ののちに、強力な合意形成が生まれる、と書かれている。
仮に反対意見を持っていた人間でも、自分の意見が適切に議論の俎上に乗り、適切に扱われた結果であれば、納得はできなくても理解した上で、強力に実行を推進できると言われている。

これは「Disagree and(but) Commit(同意はしないが決定にはコミットする)」という姿勢であり、 AmazonのLeadership Principlesでも「Have Backbone; Disagree and Commit」として取り上げられている。

Disagree and Commit

Amazon Leadership Principlesより抜粋

これを無くして、合意形成を行った場合、反対意見を持っていた人間は「自分はうまくいくと思っていない、意思決定者が耳を傾けないだけで、もっと良いやり方があるはずだ。」という認識になり、コミットメントが生まれない。

この状態を防ぎ、適切に決定事項や形成された合意に基づいて実行を進めていくための、アプローチが「巻き込み」である。

まとめ

  • 「共有」でも「議論」でもない「巻き込み」という合意形成のアプローチ
  • 巻き込み型のアプローチは合意形成後の実行効率の最大化を目指す
  • 自身の意見を表明する機会のない状態で実行を行う場合、コミットメントが欠落する事がある

ミーティングでうまく合意形成をしたはずなのに、結果として実行プロセスが良いものにならない場合、合意形成の質自体に問題が有るのかも知れない。

その場合は「巻き込み型」の合意形成アプローチを試してみるのも手かもしれない。

Twitterもやっています。よかったらフォローしてください!


一緒に働くメンバーを募集しています

株式会社ドクターズプライム

「救急車のたらい回しをゼロにする」というビジョンの実現に向けて、病院向けのSaaSプロダクトおよび、医師/病院間の最適なマッチングを提供するマッチングプラットフォームを展開する会社を経営しており、創業期のメンバーを募集しています。採用情報はこちらから。興味を持っていただけた方はフォームからでもTwitterからでもお気軽にご連絡ください!